2023-09-06

初手術

 2週間後に抜糸して、怪我は完治すると思っていた。しかし、抜糸の日を確定させるべく数日後に受診したところ、先生の様子が変だった。エコー検査をさせてください、と言われて別室へ。その結果、ケンが切れていた。どうりで足の親指が動かないわけだ。

緊急手術と一日だけ入院です。今から2時間後で、と言われた。なんか、全身の血の気が引いてフラフラになった。一旦、準備の為に帰宅。この最中に「まあ、歳を取ればいろいろ失っていくものだ」と、気持ちは立て直せた。彼女に報告して、準備をして、再び病院へ。


また受診して、いろんな検査をして、病室へ案内された。一日だけの入院と言われたのに、いつの間にか「最低でも数日。状態が悪いと数週間」と期間が伸びていた。


初めての手術は痛くもなく、ただ暇だった。

手術が終わって病室に戻った。トイレ以外はベッドから出てはいけない。トイレも看護師さんを呼ばねばならない。と言われた。結局のところ、僕は菌が広がってなくて2泊3日で退院出来たけど、すごいストレスだった。


ホオジロザメは世界中の水族館で一匹も飼われていない。これは、飼育員の安全を担保する意味もあるが、そもそもホオジロザメはどれだけ飼育環境を良くしても、水槽に入れてしまうと、死を覚悟してでも水槽から出ようとするらしい。と、テレビで見たことがある。たった2泊3日の入院だが、その気持ちは分かる気がした。

2023-08-28

処置を終えて

家に帰れたのは深夜3時だったけれど、「明日も受診してください」と言われたので、朝11時にまた来る事になった。

そして少し眠って、準備を済ませて朝10時。そろそろ病院に行かねば。歩くのは辛いけど自転車なら乗れそうな気がした。けれど「絶対にタクシーで行け」と彼女がうるさいからタクシーを呼んだ。正解には、呼ぼうとした。何度も電話をしたが繋がらず、繋がっても「30〜40分後になる」と言われた。1時間前から電話したのにもう間に合わない。

仕方なく、彼女には怒られそうだが自転車で行く事にした。やはり、自転車は歩くよりも楽で、タクシーを呼ぶ必要は無かった。快適に走っていると、ちょうど家と病院の中間地点あたりでタイヤがパンクした。なんてふざけた運命なんだろうと自分を恨んだ。彼女の忠告を無視したからって、こんな場所でこんな仕打ちは厳しすぎる。全く歩けないのに、自転車まで押せるわけがない。外は炎天下で、バイクを押した日の絶望感が蘇る。
足の甲の縫った所から血が流れてきて、もう一歩も歩けない。結局、その場でタクシーを呼んで、外でしっかり30分待って病院へ行った。

なんか最近、二輪車と相性が悪い。

2023-08-22

恐怖で震えたのは何年ぶりだろう

 床用ワックスを購入して部屋中を綺麗にした。ついでにと、テーブルにもワックスをかけて、その勢いでテーブルのガラス板を外して風呂場で洗った。これがまずかった。僕の手はワックスでツルツルになっていて、ガラス板を落とした。割れた。足の甲に刺さった。



血が止まらないから、バンドエイドを貼って、ティッシュで押さえて、包帯でぐるぐる巻きにした。完了。


彼女が帰宅したので経緯を報告して「ちゃんと処置したから大丈夫」と僕が言うと、彼女はすぐさま包帯を外して患部を見て「これは処置になってない。洗ってもいない。足腐るよ」と言った。傷口から骨がよく見えた。

彼女はまず足をタオルで拭いてくれた。これが悲鳴をあげたくなるほど痛かった。そして病院に連れて行かれた。タオルで拭くだけでもあんなに痛かったのに、消毒と洗浄をしてから、麻酔をして縫う事になるだろうと彼女は言った。怖くて怖くて身体が震えた。抑えようとしても止まらない。


深夜の病院は患者が数人しかいなかったが、なぜか2時間待たされた。恐怖で震えている中での2時間は精神的にきつかった。


実際の処置は、真っ先に麻酔をしてくれたので、何も痛くなかった。彼女はさも当然という顔をして、「そりゃあ麻酔が先だわな」と言った。

僕は懲らしめられたようだ。

2023-07-26

バイクその4

 バイクのレギュレターとは、発電した交流の電気を直流に変えてバッテリーに充電させ、なおかつ、余分な電気は熱として放出する役割がある。なので、レギュレターが壊れた場合、余分な電気も丸ごと充電してしまう「過充電」と、交流から直流に変えられない「無充電」がある。過充電だった場合、真っ先にヘッドライトがダメになる。ブレーキを踏めばブレーキランプもダメになるし、ウインカーを使えばウインカーランプもダメになる。気持ちが良いくらいに次々と電装系が壊れていく。それほど時間もかからずにバッテリーもダメになる。無充電の場合は、たんにエンジンがかからなくなる。無充電のほうが軽症ではあるけれど、無充電の場合は、レギュレターが原因ではない可能性が出てくる。過充電ならレギュレターが原因でほぼ確定だが、無充電の場合は「そもそも発電していない」という可能性もあるのだ。こっちの場合、ジェネレータが死んでいる可能性があって、ジェネレータの交換は、レギュレターの交換とは比較にならないほど手間がかかる。ビッグスクーターは修理が面倒で、問題がある箇所に辿り着くだけでも相当な時間を要する。


ジェネレータがダメだった場合、自力で交換できる気がしないから、祈る気持ちでレギュレターを交換した。不幸中の幸いで、無充電の原因はレギュレターだった。過充電だったら、全てのライトも交換だった。本当に運が良かった。


僕はこれに安堵していたが、彼女は「過充電ならとりあえず乗って帰って来れただろうし、すぐにレギュレターが原因だと確定出来たでしょ。無充電だったから、5時間半もバイクを押したし、無駄にバッテリーを交換したし、小牧からバッテリー運ばずに済んだじゃん。何回死にかけた?買ったばかりのTシャツも変な油汚れが付いたよ」と言った。


全くその通りだ。が、今それ言わなくても良いじゃないか。

とにかくバイクは直った。





2023-07-22

バイクその3

 バイク不動の原因はレギュレターだった。早速、レギュレターをアマゾンで購入した。


配達予定日になってもレギュレターは届かなかった。注文履歴から調べてみたら「配達が遅れています。あと5日経っても届かなければキャンセルの手続きをしてください」みたいなことが書いてあった。さらりと5日も待たせやがる。


5日も待つ事は無かった。2日後にアマゾンから「配送業者より商品の所在が不明と連絡がありました」と連絡が来た。待てば良いのか、キャンセル扱いなのか明記されてない。仕方なく、カスタマーセンターに連絡すると「キャンセルという事で処理しますが、配送業者にも連絡しないと、そちら側で商品が見つかった場合、配送されるかも知れません」という事で、どこにどんな連絡をすれば良いのか教えてもらった。


この配送業者のカスタマーセンターが何度電話しても繋がらなかった。さらにこの電話には20秒10円かかるらしく、別に良いのだけど、なんでこんな事しなきゃならんのだと思えた。電話は繋がらないから、近くの営業所へ直接行ってキャンセルする事にした。


すると、営業所の人から「商品は明後日届きますが、キャンセルしますか?」と聞かれた。所在不明というのは何だったのだろう。何がなんだか分からないけど、「アマゾンのほうにはキャンセルで処理してもらったので、キャンセルでお願いします」と言って帰宅すると、僕はアマゾンのアンケートに思いのタケをぶつけた。


バイクが直る気がしない。

バイクその2

 バイクが不動の原因はバッテリーだった。早速、バッテリーを買って、試し運転がてら小牧のセカンドストリートまで行った。ヤフオクを見ていたら、この店にマルジェラのビッグTシャツが売っているらしく、実物を見て判断したかったからだ。


サイズもぴったりだったから、ご満悦で購入して、帰ろうと思ったら帰れなかった。またバイクが動かない。ろくに確認もせずに直ったと決めつけてしまい、とんでもない距離を走ってしまった。バイクを押して帰るなら、前回の3倍の距離である。生きて帰れる気がしない。


そこで、近くの公園にバイクを停めて、バッテリーだけ外して、それを持って電車で帰る事にした。原因が別にあるとしても、家でバッテリーを充電して来たら、乗って帰る事は出来るはずだ。


押すよりはマシだったが、これも楽では無かった。まず、近くの公園もそれほど近くなかったし、工具が無いから、それを買うために土地勘のない周囲を彷徨った。そして、工具を買って、取り外したバッテリーが重かった。ダンベルを持って歩いているようなものだった。さらに、駅も遠かった。これも炎天下にやる事ではない。



ダメ押しで、雨が降ってきた。さっきまでの晴天が嘘のように急に荒れてきた。雷も鳴り始めて、神龍が出て来そうだった。バッテリーが濡れるとたぶん壊れるから、僕は買ったばかりのTシャツでバッテリーを包んだ。この時、僕は泣いていたかもしれない。疲れすぎてよく覚えていない。


小走りで駅に着くと、駅員さんに「一宮に行くならバスのが早いかも」と教えてもらったから、バスで帰る事にした。


バスは走り出して、僕が先ほど歩いて来た道のりをぐんぐん戻って行った。僕がバイクを停めている公園の近くにもバス停があった。バッテリーの充電をした後は、このバス停で降りれば楽だな。なんて素直に思えるわけもなく、無駄に長距離を歩いた事と、無駄に雨に打たれた事と、バッテリーを守るためにTシャツを犠牲にした事に腹が立った。


バイク

 パチンコ屋の帰りにバイクが動かなくなった。パチンコ屋の店員さんに工具を借りて、その場でスパークプラグの確認だけしてみたが、火は飛んでいたから、これは僕の手にはおえない。近くにバイク屋があるので、そこまで持って行く事にした。


あまり近くなかった。炎天下で30分もビッグスクーターを押すのは酷だった。さらに、店に着いても「ウチはパーツ屋なんで…」と一瞬で断られた。「近くに修理できる店ありますよ」と教えてもらったから、またバイクを押した。


全く近くなかった。先ほどの店員さんは「車でなら近い」という事だったようだ。炎天下で計2時間もビッグスクーターを押すのは拷問のようだった。地下で永遠にぐるぐると手押し車を押す奴隷を思い浮かべた。そして、修理は断られた。最近は忙しいから、予約で手一杯らしい。


覚悟を決めて、家まで押す事にした。全然進まないけど、押していればいつか必ず帰れる。休憩を取りまくれば大丈夫。ぐるぐる回る奴隷の人よりはマシだ。


いつか帰れると思っていたが、疲労のことを考慮していなかった。徐々に押せなくなる。休憩の頻度が上がる。汗が止まらない。極端に左腕に負担がかかる。奴隷よりマシというだけが心の支えだった。


あと1時間くらいで帰宅出来そうな所で、「誰が奴隷だ!こんちくしょう」と、心の支えが折れた。道路に座り込んでボイコットした。しかし、暑いから、座っていても事態は悪化していくと気づいたのは10分後だった。見知らぬ婆さんが「エンストかえ?」と聞いてきた。婆さんはとても親切で、ガソリン無いなら分けてあげる、バッテリーなら充電してあげる、腹は減ってないか?と言ってくれた。ガソリンはあるし、バッテリーかどうかは分からないし、4時間半もバイク押してたから吐きそうで食欲もない。と、僕が全てを断ると、婆さんは「こんな婆さんとでも、会話しただけでも、少しは休憩になったじゃろ」と言った。神様かと思った。

気持ちを立て直して、計5時間半で帰宅できた。



彼女に「熱中症なめんな。死ぬぞ」と、めちゃくちゃ怒られた。

2023-07-04

いろいろ

3月末に叔父さんが死んだ。親父の時もだが、ちょうど太っている時期だったからスーツが着れなかった。今回のほうが酷くて、ジャケットを羽織っただけのほぼ私服で参列した。普段から太っているわけでもなく、何年かに一度こういう自堕落な時期があるだけなのに、毎回この時期に葬式が重なる。僕が体重80キロを超えると誰かが死んでしまう。


小説を書いて、文学賞に応募した。行けるような気もするし、全くダメな気もする。応募した後で芥川賞作品や直木賞作品を読んでみたけど、僕は語彙力が足りないし、品が無い。


応募した後でダイエットを始めた。まだ始めたばかりだけど、今回は「サラダとチクワしか食べない。あとはハイボールを飲んで空腹をやり過ごす」というやり方。炭酸を多めにして作っているから、酔う前に腹がふくれる。それほどストレスを感じる事もなく痩せる事が出来そうだ。


母ちゃんから連絡があって、どうやらテレビが壊れたらしい。母ちゃんは独居だからコレは辛いだろうと思って、ネット通販ですぐにテレビを買った。数ヶ月前に詐欺サイトで騙された経験があるから代引きにした。

注文した後で、いくら待っても通販サイトから確認のメールは来ないし、問い合わせをしても返信が無い。代引きにしたから良かったものの、テレビが届かないのは困る。調べてみると、その通販サイトはキャンセル不可だし、電話番号はどこかの幼稚園だった。もう通販は怖いなと思って、彼女が休みの日を待って、二人でテレビを買って持って行く事にした。


と思ったらテレビがちゃんと届いた。あの通販サイトは良心的な値段で、指定した日に指定した時間に発送してくれていた。早速、設置するために久しぶりに知立へ戻ったら、知立駅ががらりと変わっていた。「知立市はトヨタ系の会社が少なく、ベッドタウンだから人口のわりに税収入が少ない。ゆえに、何をするにも時間がかかる」と、小さい頃から親父が言っていた。駅の工事は何年前からやっていたのか忘れたほどだが、本当に変わるとは。僕は「工事しているフリをしているだけで、いつか、しれっと元の古びた知立駅に戻るんじゃないか」と思っていた。


実家では、テレビを設置するだけでは済まなかった。それまで使っていたテレビは、親父がこだわって買ったらしく、テレビ台にスピーカーやアンプが内蔵されていた。テレビ台はそのまま使いたかったけど、小さくて、新しいテレビが乗らなかった。このテレビ台の解体は相当キツくて、二人で汗だくになった。ネジが大量に使われていたし、至る所がボンドで接着されていた。母ちゃんが親父の遺影に向かって、「こんな面倒なもの買いやがって」と悪態をついた。

このテレビ台の解体中にとんでもない物が出てきた。僕が18歳の時にとんねるずの番組に出た時のビデオテープだ。恥ずかしいから、僕はこのビデオを観た事がない。今になっても観たくない。母ちゃんに見つかる前にこっそり捨てたのだが、母ちゃんはゴミ袋からこれを見つけた。そして、僕が捨てないように別の場所に隠された。僕は親父の遺影に向かって、「こんなもの保管しやがって」と悪態をついた。


実家はテレビを買い替えたが、我が家は冷蔵庫を買い替えた。それまでは、東京にいた頃に使っていた小さな冷蔵庫で、親父が買ってくれた物だった。名残惜しかったけれど、あまりにも容量が少なかった。特に飲み物が入らないのが不便で、お茶と牛乳とドレッシングしか入らなかった。新しい冷蔵庫は容量が倍になって、常に、彼女用のビールと僕用のウイスキーと炭酸水も冷やす事が出来るようになった。キンキンに冷えたハイボールは言うまでもなく、この暑い季節に最高だ。



最高過ぎた。

ハイボールが進みすぎて、アルコール依存度が跳ね上がった。こうなるとダイエットどころでは無い。空腹を紛らすために飲んでいたけれど、記憶が無くなるまで飲むと、かなりの高確率で、家にある食べ物を食べ尽くす。そして、LINEやSNSで他人に迷惑をかける。そもそも、ハイボールで飲んでいるくせに、毎回ウイスキーが1リットル減っているのだから、これはダイエットになっていない。ウイスキーが1リットル飲めるようになっている事も良くない。十日足らずで引くほど酒の空き瓶が増えた。


これに対応するべく、まず、すぐに食べないものは徹底して冷凍する事にした。さすがに凍った物は酔った僕でもかじらないだろう。そして、ウイスキーは大量に冷やさず、泥酔しない程度だけ冷やす事にした。Twitterやfacebookは通知をオフにして、見つけにくい場所へアプリを隠す。LINEはこまめにトークを消す。これでどうなるのかは、まだ分からないので様子をみなければ。もし失敗した場合、僕は翌朝に歯が折れているかもしれない。携帯のアプリの配置がめちゃくちゃになっているかも知れない。



親父が買ってくれた小さな冷蔵庫は、僕のアルコール依存度を抑える事に大いに貢献していた。死んでもなお、僕を守っていてくれていたのかもしれない。

捨てちまった。あーあ。