2023-07-22

バイクその2

 バイクが不動の原因はバッテリーだった。早速、バッテリーを買って、試し運転がてら小牧のセカンドストリートまで行った。ヤフオクを見ていたら、この店にマルジェラのビッグTシャツが売っているらしく、実物を見て判断したかったからだ。


サイズもぴったりだったから、ご満悦で購入して、帰ろうと思ったら帰れなかった。またバイクが動かない。ろくに確認もせずに直ったと決めつけてしまい、とんでもない距離を走ってしまった。バイクを押して帰るなら、前回の3倍の距離である。生きて帰れる気がしない。


そこで、近くの公園にバイクを停めて、バッテリーだけ外して、それを持って電車で帰る事にした。原因が別にあるとしても、家でバッテリーを充電して来たら、乗って帰る事は出来るはずだ。


押すよりはマシだったが、これも楽では無かった。まず、近くの公園もそれほど近くなかったし、工具が無いから、それを買うために土地勘のない周囲を彷徨った。そして、工具を買って、取り外したバッテリーが重かった。ダンベルを持って歩いているようなものだった。さらに、駅も遠かった。これも炎天下にやる事ではない。



ダメ押しで、雨が降ってきた。さっきまでの晴天が嘘のように急に荒れてきた。雷も鳴り始めて、神龍が出て来そうだった。バッテリーが濡れるとたぶん壊れるから、僕は買ったばかりのTシャツでバッテリーを包んだ。この時、僕は泣いていたかもしれない。疲れすぎてよく覚えていない。


小走りで駅に着くと、駅員さんに「一宮に行くならバスのが早いかも」と教えてもらったから、バスで帰る事にした。


バスは走り出して、僕が先ほど歩いて来た道のりをぐんぐん戻って行った。僕がバイクを停めている公園の近くにもバス停があった。バッテリーの充電をした後は、このバス停で降りれば楽だな。なんて素直に思えるわけもなく、無駄に長距離を歩いた事と、無駄に雨に打たれた事と、バッテリーを守るためにTシャツを犠牲にした事に腹が立った。