2020-01-25

最後の挨拶

昨日の夕方に母ちゃんから泣きながら電話があった。「認知状態のオヤジが急に我にかえって、泣きながら、今までありがとうって言った」と。そろそろ本格的にヤバい時は、血圧がすごく下がるか、オシッコの量が極端に減るかのどちらかだと彼女から聞いていたが、まさにオシッコが極端に減っていた。最後の最後で戻ってきて、母ちゃんに感謝の言葉を伝えたんだなあ。やるじゃないか。

夜、彼女に状況を話すと「明日の始発で行ってこい。最後の挨拶をするなら明日だ。もう数日ももたない」と言われた。それと、この前「ナオが来るなら酒だろ!俺はナオと酒が飲みたいんだ!って暴れたって言ってたでしょ?看護師さんに見つかったらダメだけど、隠してお酒買っていきな。どうせ飲めないと思うから、一緒に乾杯してあげて」と言われた。これは本格的に最後だと思い、妹にも連絡した。

彼女が寝た後、過去のオヤジの写真を見ながら1人で呑んだ。

そして今日。完全に飲み過ぎて、うっかりしっかり寝坊した。10時にはバスに乗れたが、母ちゃんから「オヤジがナオを呼んでるから早くきて」と連絡があった。すまんオヤジ。頑張れオヤジ。

病室に着くとオヤジは元気そうに見えた。とにかくよく喋る。言ってる事が飛び回るし、呂律が回ってない事も加わって、会話の成立率20%くらいだったが、とにかく最後に言いたい事を吐き出しているように見えた。

歌も歌いだした。なんか元気だな。ニット帽をかぶりたいと言うので、かぶらせたら「これが若い頃だったら、俺はイケメンだな」と、どえらいゴキゲンだった。
この流れでオヤジに「今日はな〜。なんと!ビールを買って来たんだぞ〜!」と言ったら「は?飲まん」と言われた。ビールよりもキンキンに冷えた返答しやがった。
前回のせん妄の時と違って、全体的に機嫌が良い。よく笑う。

やはり元気そうに見える。   あれ?これって…

オシッコの量を記入してある紙を写メして、彼女に送った。血圧も報告した。
数分後に彼女から「復活したね。これなら大丈夫かな」と返信がきた。やっぱな。オヤジっていつもこう。

妹もきて、オヤジの復活に安堵したが「あんたは沖縄に兄弟はいるのか?」とオヤジに言われて「娘を忘れやがった」とキレていた。とにかく会話がめちゃくちゃだった。

夕方、熱が出だした。口数も減って、しんどいと言いだしたので、氷枕で頭と脇を冷やしたが苦しそうだった。ちょっと待て、ニット帽してるじゃないか。ニット帽を取ると「こりゃええわ」と涼しげな顔をして、体温が下がったわけではないが、また口数が増えた。


とにかく元気そうだったので、今日は病室に泊まるか、実家に泊まるつもりでいたが、普通に家に帰った。