2020-11-26

酒をやめています

 ある日。彼女が夜勤で家にいない日。僕はいつものように酒を飲んで寝た。

夜中に目を覚ますと、服がべとべとに濡れていて、僕の寝ている横で棚が倒れていた。手で押したって簡単に倒れそうもない棚がどうやって倒れたのか分からない。棚の上にあった酒やジンジャエールの瓶は粉々に割れていて、その液体で僕はべとべとになっていた。べとべとなのは僕だけでなく、買ったばかりの彼女のお気に入りのラグや、一度座ると立ち上がれなくなる無印のクッション2つ。彼女が仕事で使う大量の本。

すべてが糖分を含んだ液体で濡れて、もうすでに少し乾きかけのべっとべとの状態だった。コーヒーを作るやつは壊れていたし、炊飯ジャーも転がっていて、僕自身も転がっていて、どれが無事でどれが壊れたのかも分からない状態だった。

これは普段から酒癖の良くない僕でも初めて見る悲惨な光景だった。

彼女が帰ってくる前に元に戻さなきゃと手を付けてみたものの、まったく片付く気がしない。酔った僕はいったい何を考えてこの棚を倒したんだろう。ニヤニヤしながら「よーし、今日は棚を倒すぞー!おー!」ってやってる姿を想像して、自分自身に腹が立ってきた。

酔った僕がめちゃくちゃやって、シラフの僕が事態を収束するという行為をこの人生でいったいどれだけやってきたのだろうか。と考えながら僕は自分自身を思い切りビンタした。自分でやったけど「あ、これケガするわ。アゴやば」と思うほど痛かったので「酔った僕め、反省しやがれ」と少し気分が晴れたが、いま僕はまだ少し酒が残っている状態なので、もしかしたら「酔ってる僕が、さらなる悪ふざけでシラフの僕に目がけてビンタした」とも言えなくもない。どっちがどっちにビンタしたのか訳が分からなくなった。

とにかくどっちの僕でもいいから片付けをしなくてはならない。ほっぺたが無駄に痛い。アゴもきてる。


結局、片付けは彼女が帰ってきても終わらず。全部バレた。

自分でさんざん反省したし、ほっぺた痛いからもう怒られたくない。怒られたくないから、怒られる前に僕から怒った。「酒のせいで大変な目に遭ったわ。酒めええええ!」と。

そして家にある残った酒を全部捨てた。奇跡的にこれで怒られずに済んだ。

それから2か月。僕は酒をやめています。


ときどき飲みたくなるけど「ウイスキーを何リットルも捨てたのに、また買うのか。バカバカしい」という気持ちが僕から酒を遠ざけます。

おじいちゃんが「どれだけ酔って、お金がなくなっても家に帰れるように」と身に着けていたあの金の指輪を、僕が受け継いでからわずか数日で酒をやめたわけで、これは意外とおじいちゃんの願いだったのかもな。と前向きに考えています。


パソコンを買い替えて、音楽ソフトの新しいやつもインストールしたので、試しにクリスマスのミックスを作っています。適当に配ろうと思ってますが、youtubeがいいのかファイルストレージとかで個別に送るほうがいいのか、どうしようか誰かに相談して、今月中にはアップしようと思ってます。